さだまさしがドラマに出演とのニュースを見ました。有村架純の父親役で弁護士事務所の所長とのこと。目下私は役者としてのさだまさしにはあまり関心を持っていませんが、昔の彼は線の細い身体でしたが、現在は恰幅が出ているので父親役も似合ってきているかもしれません。
私は高校時代にさだまさしのファンになり、以来洋楽にハマったり、ポップスばかり聞く様になったりと紆余曲折はありましたが、結局いつもここに戻ってきてしまいます。
考えるに、私は彼が歌の中で描く「物語り」と、その物語を語る「言葉」の選択に昔からとても惹かれています。彼の選ぶ言葉はとても自然でありながら心に響き、私の心を物語りの中に引き込み、物語りの中の登場人物の心と一体化させる力を持っています。
私が好きな彼の歌は沢山ありますが、長い年月の中で最も私の心の中に流れるのは「極光」という歌です。実在の男性カメラマンの人生を描いた歌ですが、私は高校時代にこんな風に自分の夢に正直に何も恐れず純粋に向かって生きていけたら素晴らしいと思っていました。またこの歌は、立ち止まることなく自分の夢を追いかける彼の人生に必死に追いて生きる奥さんの目を通して彼を描き、オーロラ撮影の事故でこの世を去った彼への想いを、彼との思い出に乗せて語っています。夢を追い続けた彼の人物像をとても鮮明に感じます。
50を過ぎた私がこの歌を口ずさむと、昔はこんな風に夢を追って生きたいとの一心でしたが、今となると半生を振り返り、ここまで思い切った人生は送れてこなかったなと思います。
私の半生のキーワードは、卓球と写真と台湾と中国ですが、卓球と写真は夢でした。台湾と中国は残された可能性の中での現実的な挑戦でした。私はそこまで自分の可能性を信じられませんでしたし、それで正解だったとも思いますが、ホントに彼にはかなわないと率直に思います。
心に刺さるフレーズは、「自然はとても大きいって、それが得意のフレーズ、人間が狭い輪っかの中で傷つけ合うのを静かに見てる」という部分が一つ。まさに今の世界です。
そしてクライマックスの、「あなたが残したものは世にも美しい地球が夢を見ている写真と、それからこの私と・・・」のくだり。オーロラの写真を「地球が夢を見ている写真」と表現し、彼が残したオーロラの写真を見つめる奥様の切なさを痛烈に感じさせるフレーズです。ここに至るまでの歌詞に描かれる物語りが、私の心を物語りの中に引き込み、このワンフレーズの痛みを強烈にします。
ホントに素晴らしい歌だと思います。
この歌は、「夢の轍」というアルバムに収録されています。
コメント